物理学教授でも足りない医学リテラシー
小池仁です。
以前、とある大学の物理学教授の家族が入院していたときの話です。
教授は病気のこと、薬のことを熱心に調べてきたようでした。
Aという治療薬の使用に関しての説明でした。
教授「なぜAという薬を使うのですか。 病気の仕組みを考えればBの方が適していますよね」
教授は続けて、こちらを試すように病気の仕組み(生理学的な働き)や薬の作用の仕方(作用機序)を説明しました。
教授の説明は論理的で説得力のあるものでした。
でも間違っています。
ここが医学が面白く、美しくないところなのですが、医学は論理的(生理学的)な説明が間違っていることが多々あります。
医学の大原則
医学は論理学ではなく統計学
このような例は無数にあります。
昔、「心筋梗塞後に不整脈が起こると死亡率が高い」→「不整脈を減らせば死亡率が減る」→「心筋梗塞になった人に抗不整脈薬(不整脈を抑える薬)」という経緯がありました。
しかし、その後の研究では「抗不整脈薬を飲んだ人の方が死亡率が高い」という結果になり、心筋梗塞後の人に抗不整脈薬は飲ませない、というのがスタンダードになりました。
このように生理学的、論理的に考えて正しいものが、実際には間違っている、ということです。それだけ人体は複雑ということですね。
今回の大原則
医学は論理学ではなく統計学
を理解していないと、医学を読み間違えてしまうので気をつけてください。