健康IQ ~賢く健康に生きる~

「がん」と言われた。心筋梗塞、脳梗塞を起こした。「生活習慣病」、「高血圧」、「糖尿病」を指摘された。 医師の立場から、患者になる前、患者になってから、少しでも長く健康で生きるにはどうすべきかを伝えられれば

医者はみんな違ってみんな正しい?

小池仁です。

 

今回は、なぜ医者によって判断が違うのか。

一度はこんな話を耳にしたことがあるんじゃないでしょうか。

 

お腹が痛くて、近所のA病院に行くと

医者A「腹痛ですか。じゃあ痛み止めを出しておくので安静にしておいてください」

処方された痛み止めの薬を飲んで2日ほど様子をみていたが、よくならず、次はB病院に行くことにしました。

医者B「どうしてこうなるまで放っておいたんだ!すぐに大きな病院に行って手術だ!」

 

実際こういった話は少なくありません。

過激な人であれば医者Aを訴えようという人もいるかもしれません。そこまでいかなくとも、医者Aのところには二度と行かないという人は少なくないでしょう。

でも医者Aも医者Bも正しい可能性があります。

A、Bどちらも全く同じ医学知識を持っていても、このような結果になることがあります。

理由は二つ

1)時間的経過

2)価値観

 

1)時間的経過について

医者Bは医者Aよりも後に診ています。それだけで「症状の持続時間が長い」という重要な情報が追加されています。さらに「処方された薬を飲んでも良くならなかった」という情報も増えています。

一見同じ条件で診ているようですが、実際は医者Bの方が有利な条件で診察しています。

 

2)価値観について

今回のメインはこっちです。仮に医者Aと医者Bが同じ医学知識を持っていて、同時に診察をしても、このような結果になることがあります。

以下の棒グラフをみてください。

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青色:経過観察 オレンジ:検査 灰色:治療

横軸がどれだけ病気を疑う%です。

医者は診察をしながら

この棒グラフの上で病気の確率が左右しています

医者Aの場合は病気を65%疑っても、経過観察となります。病気が90%あると思ったところでやっと治療開始です。

一方医者Bの場合は病気を65%疑った段階で治療となります。

このグラフの違いは医者の価値観(医療費をどう捉えるか、など)や、それまでの経験、ひいてはその日の体調(今日は疲れたから早く帰りたい、など)によって左右されたます。

 

こういったことから医者の間で有名な格言があります

「後医は名医」

後医(こうい)つまり、後に見る医者の方が「正しい」診察をできるため、名医と言われやすい。そのため、後医は前医を馬鹿にするようなことがあってはならない、という言葉です。